STAGE
葵わかな 舞台「パンドラの鐘」取材会!
1999年に蜷川幸雄さんの指名で野田秀樹さんによって産み落とされた「パンドラの鐘」。同作は、当時ともに世界の舞台で戦った日本の演劇界の二大巨頭、蜷川さんと野田さんによって、Bunkamuraシアターコクーンと世田谷パブリックシアターの二館で同時期に上演され、蜷川さんは“岩”、野田さんは“紙”と、同じ作品ながら全く違ったモチーフとアプローチで作品を創り上げ、世紀の競演は一大センセーションを巻き起こした。さらに蜷川版には、大竹しのぶさん、勝村政信さん、生瀬勝久さん、松重豊さん、一方の野田版には、堤真一さん、天海祐希さん、古田新太さん、松尾スズキさんなどが出演し、豪華出演陣の対決も大きな話題を呼んだ。
そして、現役のまま惜しまれつつ2016年にこの世を去った前芸術監督・蜷川幸雄さんの七回忌を迎える今年、“NINAGAWA MEMORIAL”と題し、初演以来23年ぶりに上演。蜷川作品より多大な影響を受け、アングラ、シェイクスピア、海外戯曲、歌舞伎まで様々なジャンルの作品を手掛けている、気鋭の演出家、杉原邦生さんの手によって、記念すべき公演として再び現代に蘇える。
葵は、古代の女王・ヒメ女を演じる。
稽古開始から2週間が経ち葵は、「今はまだ形を作っている状況で、新たに知ることが多くて、頭がパンクしそうです(笑)。毎日濃厚な日々を過ごしています。」とコメント。
23年前に上演された同作について意識していることはあるか?という質問があがり、「まずは観ないでやってみようと思いました。ポスター撮影の前に“野田版”と“蜷川版”の映像資料をいただきまして、その時も迷ったのですが、(ポスター撮影のカメラマンが蜷川実花さんだったので)撮影の時に蜷川ささんからお話を伺ってやるのもいいのかなと。今、どんどん観たくなっています(笑)。作品の持っているパワーが大きすぎて、知らないほうが強い時もあるのかなと思っています。本読みの時に邦生さんがおっしゃっていたのですが、野田さんが好きにやってほしいと言われていたそうで、もちろんすごい作品ではあるのですが、今この時にこの作品を作ろうとしているのは邦生さんや私たちなので、ちょっとだけ無鉄砲でも見栄でも堂々と胸を張っていたい気持ちがあり、できれば観ないでやりたいと思っています。でも、台本が進めば進むほど難しくて、以前演じられた方々がどんな風に解釈してどんな風に言ったのか気になってしょうがなくて、今日明日には観てしまうかもしれません(笑)。もちろん観ても間違いはないのですが、自分と葛藤しています。」と答えた。
ストレートプレイの舞台は今年2月~3月まで上演された舞台「冬のライオン」に続き2作目の出演となる葵。「前回の作品と今回の作品では毛色が違うと思っています。「冬のライオン」で学んで続けようと思っているのは、あまり準備をしないこと。自分で固めて作っていくことが良い時もあるけれど、長い時間向き合える時や周りに助けていただける空間がある時は、凝り固めずに何にでも対応できる柔軟性が大事なのかなと思っています。」と話した。
W主演の成田凌さんとは2017年10月~2018年3月まで放送された連続テレビ小説「わろてんか」以来2度目、当時は親子役で共演した。成田さん曰く、“その時はずっとお母ちゃんと呼んでいた。時も経っているし立ち姿も違うので独特な感覚”とのこと。葵は、「前回を引っ張るわけではなく、初めましてではないのですが初めましてのような、不思議な感覚。一緒の作品を長いことやっていたという信頼の気持ちがあります。
成田さんはクールな感じに見えて、実は熱い印象です。また、稽古の時の席が隣なので時折お話しさせていただくのですが、波長が猫みたいだなと思っています。話していて“こうだよね”と言うと全く聞いていなかったり、“この話つまらなかったな”と思ったらそこにはすごくのってきたり(笑)。私は成田さんとミズヲがリンクして見えるので、面白いなと思いながらご一緒しています。」と笑顔で話した。
その後、これまでの稽古で印象的だったエピソードを聞かれ、「何をやっても、何回やってもいいんだと思わせてくれる先輩方です。私、“もう1回ボーイ”がすごく好きで…。邦生さんが“もう1回やるよ”とおっしゃると、玉置(玲央)さんが“もう1回ボーイ!”って言いながら動き回ってセッティングの時間をエンタメにしてくださるんです(笑)。昨日の稽古の時に私のシーンで何回もやり直してしまったところがあって、時間をつかってしまったので申し訳ないと思っていたら、“もう1回ボーイ、行く?”って言ってくださって優しいなと思いました。とても素敵な環境です。」と笑顔で答えた。
また、同作の魅力について、「最初に脚本を読ませていただいた時に、ポップなテイストで進んでいくんだけど、深いテーマを抱えている印象でした。脚本の中で個人的に素敵だと思ったところがあって、言葉遊びがたくさんあってセリフもたくさんあるのに、本当に大事なことだけは言わないところが逆に優しいと思いました。ヒメ女とミズヲの関係性についてや、ヒメ女の行く末が抱えているより大きな問題とか。そういったことをあえて言葉では説明しないで、作品の流れとして見せるところが緻密だし巧妙だと感じました。言い過ぎずに観た人にゆだねられるところがすごいな、素敵だなと思いました。そして稽古場に入って邦生さんの演出を受けると、目で見て得る情報も多い演出になっていて杉原さん版の「パンドラの鐘」なんだと。台本の緻密さと見た目の情報でより作品が深まっている気がします。なおかつ取っつきにくくなく、いろいろな人に伝わりやすい作品になっていると思っていて、またそういう形を目指していくのが今回なのかなと思います。脚本にもリスペクトを持ちつつ、現代の「パンドラの鐘」を作れたらいいなと思います。」と話した。
そして最後に、「良い作品は現代にリンクするところがあると先ほど邦生さんがおっしゃっていましたが、23年経って、今またリンクしだしているのは悲しいことかもしれないけれど、私たちが信じているエンタメの持つパワーみたいなものがこの時代に作用して、何かが届けられるような力を持つ作品になっていると思います。また、それとは反対に、1つの劇、1つの娯楽としての側面もあると思うので、それぞれの楽しみ方をしていただきたいです。そのように届けられるように頑張ります。」メッセージを送った。
COCOON PRODUCTION 2022 NINAGAWA MEMORIAL「パンドラの鐘」は、6/6(月)~28(火)東京・Bunkamuraシアターコクーンにて、7/2(土)~5(火)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。
ぜひご期待ください!
【あらすじ】
太平洋戦争開戦前夜の長崎。
ピンカートン財団による古代遺跡の発掘作業が行われている。考古学者カナクギ教授の助手オズは、土深く埋もれていた数々の発掘物から、遠く忘れ去られていた古代王国の姿を、鮮やかによみがえらせていく。
王の葬儀が行われている古代王国。兄の狂王を幽閉し、妹ヒメ女が王位を継ごうとしているのだ。従者たちは、棺桶と一緒に葬式屋も埋葬してしまおうとするが、ヒメ女はその中の一人ミズヲに魅かれ、命を助ける。
ヒメ女の王国は栄え、各国からの略奪品が運び込まれている。あるとき、ミズヲは異国の都市で掘り出した巨大な鐘を、ヒメ女 のもとへ持ち帰るが……。
決して覗いてはならなかった「パンドラの鐘」に記された、王国滅亡の秘密とは?
そして、古代の閃光の中に浮かび上がった<未来>の行方とは……?