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自主制作映画『Noise ノイズ』が国内外で話題を集めた松本優作監督の最新作『ぜんぶ、ボクのせい』。愛を知らない少年と孤独を抱えた人たちとの交流を描いた作品だ。児童養護施設で育ち、母と暮らすことを夢みてきた少年・優太を演じたのが白鳥晴都。オーディションで主演をつかんだ。難役とどう向き合ったのか、撮影中のエピソードをまじえて聞いた。

諦めたわけじゃない。全てを受け入れたラストの言葉に込めた思いを感じて欲しい

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―― 唯一の家族である母親から拒絶され、自分の居場所を失った優太。絶望のなかで出会ったホームレスのおっちゃん・坂本(オダギリジョー)と過ごすうちに、少しずつ生きる希望を見出していく。俳優として歩み出したばかりの白鳥だが、13歳の孤独な少年を見事に演じきった。主演に決まったときの心境は?

「オーディションでは映画のラストシーンを演じました。とても難しいシーンで、どう演じればいいのか悩みましたし、一生懸命考えてのぞみました。だからこそ合格したと聞いたときはとてもうれしかったです。学校から帰ってすぐに母から合格したことを聞き、思わず飛び跳ねたくなるくらいの気持ちでした」

―― 優太は児童養護施設で育ち、学校でも一人ぼっち。家族の愛情を知らずに育ってきた少年だ。優太の気持ちをどう理解していったのだろうか。

「僕は家族と何でも話せる関係で、親はいつも僕の味方でいてくれ、寄り添ってくれています。だから、優太の気持ちを理解するためにクランクインの1カ月ほど前から松本監督と何度も話し合ったり、本読みをしました。ひとつひとつのシーンに対して、思っていることを書き出してみてと言われ、優太の気持ちを想像しながら台本に書きこんでいきました。僕とは全く違う生活を送っている優太なので、最初は想像することも難しかったです。撮影に入ってからは、おっちゃん役のオダギリさんからも動きやセリフの言いまわしに対してアドバイスをいただき、とても勉強になりました。撮影の後半は地方で行われたので、初めて親元を長期間離れての生活でした。優太の境遇とは異なりますが、僕にとって初めてのひとりでの生活だったので、家族がいないさみしさを実感することができました。本当の孤独ではないけれど、さみしい気持ちを体験したことで、優太の気持ちが少し理解できたと思います。実体験として優太の気持ちを共有できなくても、自分が経験したことのある怒りや悲しみを優太の気持ちに近づけていくようにひとつひとつ考えて演じました」

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―― 撮影中にはオダギリジョー、川島鈴遥など先輩俳優からもたくさんの刺激を受けたそうだ。

「オダギリさんとは同じシーンが多かったので、撮影の合間に色々とお話をさせていただきました。作品全体のことをとても考えていて、監督と話している姿をよく見かけました。撮影後にみなさんと食事に行ったときにも、演技のことなど色々と質問することができて貴重な時間になりました。撮影前の準備や役者としての心構えなどもうかがったのですが、1本筋が通っていてとても素敵な方です。
川島さんは、お姉さんのような存在です。普段はやさしく話しかけてくれてリラックスさせてくれました。撮影になるとスイッチが入り、詩織の顔にすっとなるのがすごいなと思いました。エンディング・テーマ曲の『夢で逢えたら』のPVでまたご一緒できて、うれしかったです。
母親役の松本まりかさんは、僕がどうやったら感情を高められるかを若葉(竜也)さんと一緒に考えてくださいました。納得いくまで何度でもやっていいよとおっしゃってくださったので、難しいシーンでしたが自然と優太の気持ちをつくることができました」

―― 軽トラで暮らすホームレスの坂本と、裕福な家庭ながら孤独を抱えている女子高生・詩織(川島鈴遥)との出会いで、絶望から少しずつ抜け出していた優太。しかし、おだやかな日々は長く続かなかった。13歳の少年が体験するには悲しく、苦しいできごとばかり。演じていて印象に残っているシーンを聞いた。

「仲野太賀さん演じる片岡のリサイクルショップでのやり取りは、他のシーンと違って雰囲気が少しやわらかくなるような気がして好きです。優太の心の変化が見られるところでもあるなと思っています。優太が海へ入っていくシーンは緊張感があって、印象に残っています。『全力でやって大丈夫だよ』と川島さんがおっしゃってくれたので、僕も躊躇せずに全力で演じることができました。一発撮りだったので、撮影前は感情を高めなきゃと緊張していましたが、はじまってみたら無我夢中で、気づいたら優太の気持ちになっていました」

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―― オーディションでも演じたラストシーンは、物語に余韻を残し、観客に問いかけているようだ。

「撮影前に監督と話すなかで、一番印象に残っているのがラストのセリフについてでした。僕は、何もかも嫌になって自分の人生に絶望し、全てを諦めてしまったから出た言葉だと思っていたのですが、絶望のなかにも希望を持ったひと言だと聞いて驚いたと同時に、とても深い言葉なんだとぐっときました。がんばって立ち上がってもつまずいてしまう優太だけど、世の中理不尽なことばかりだけど、全て受け入れた先に何かあるかもしれない。暗いだけじゃない、小さいけれど光は見えているラストなんだと。全て受け入れた優太の表情も自然と出てきました」

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―― スカウトをきっかけに俳優の道へと進んだ白鳥。映画2作目となる本作で、さらに芝居の楽しさ、やりがいを感じたという。

「車が好きだから将来は車に関わる仕事ができたらと思っていたので、芸能界に入るなんて考えたことがありませんでした。最初はどういう世界かわからないので、躊躇していましたが、今は俳優という仕事に出会えたことに感謝しています。この映画を通して、もっと色々な作品に挑戦したいという思いがわいてきました。新しい自分に出会えるのも楽しいし、撮影後の達成感はなかなか味わえるものではないので、やりがいのある仕事だと思っています。優太はとても難しい役でしたが、悩みながら演じきったあとは、心にぽっかりと穴が開いたようにさみしい気持ちになりました。そして、次に向かってがんばろうという気持ちにもなりました」

―― 白鳥演じる優太の表情ひとつひとつが心に突き刺さってくる作品だ。最後に、映画の見どころを聞いた。

「優太がさまざまな試練を乗り越え、少しずつ感情が変化していくのでそこに注目して見てもらえたらうれしいです。」


Writing:岩淵美樹

インフォメーション

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(C)2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会

MOVIE

『ぜんぶ、ボクのせい』

8月11日(木・祝)公開


児童養護施設で暮らす優太(白鳥晴都)は、施設にも学校にもなじめず孤独だった。ある日、母に会いたい一心で施設を飛び出し、住む家を訪ねるがそこには自堕落な生活を送る母の姿が。一緒には暮らせないと追い出され、行く当てもなく街をさまよう優太。海辺で出会ったホームレスの坂本(オダギリジョー)のもとに身をよせ、時々顔を出す女子高生・詩織(川島鈴遥)に心惹かれていく。3人のおだやかな日々に、突然終わりがやってくる。その先にあるものとは……。

▼公式サイト
https://bitters.co.jp/bokunosei/

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