「原作映画はもう100年近く前の作品なのに、今を生きる僕がみてもまったく色褪せない。むしろ、例えば『スター・ウォーズ』で観たものが『メトロポリス』のオマージュであるとか発見がたくさんありました。僕らが親しんでいるSFの世界の原点がそこにはあって、そんな作品に参加できることを嬉しく思っています」
「単純に『テレビで観ている人たちが目の前にいる……』と不思議な感覚で、緊張やプレッシャーを感じることさえできなかった。僕自身、もっと緊張すると思ってたんですけどね。実際に稽古がスタートして感じたのは、キャリアと実力を兼ね備えた方々ばかりだけれど、みなさんすごくフランク。経験の少ない僕にも同じ目線で対等に意見を交わしてくれる。僕が勝手に萎縮したり、変な遠慮をするほうが失礼だと思いましたし、恥をかいてでも正面からぶつかっていこうと決意できました」
「そもそも僕は舞台が好きじゃなかった。この仕事のほとんどはフィクションなんだけど、その中でも舞台はもっと現実味がないものだと思っていて、経験もないのに敬遠していました。それがいざ舞台を経験してみると、意識を大きく変えられてしまった。稽古を重ねていざステージに立つと、『これリアルじゃん』って。役を生きている実感が強烈にあり、それまでの抵抗が嘘のようにあっけなく舞台にのめり込んでしまいました(笑)。そして、初めて自分の意思で観に行った舞台が森山未來さんの『死刑執行中脱獄進行中』だったんです」
「俳優だけでなくダンサーとしても森山さんの存在感は唯一無二。あの身体表現はどうやったらできるんだろうと思って、稽古中はいつもそばにいて質問攻めにすることも(笑)。元々体を鍛えたり、トレーニングをするのが趣味だったんですが、今はそれを止めていて。それはなぜかというと、“しなやかな動きを表現するのに筋肉が邪魔になるときがある”と森山さんの言葉があったから。稽古前は、ストレッチではなくヨガをされていて、迷わず『僕にも教えてください』と。聞きたいことがたくさんあるから、稽古の後に一緒に飲みにいかせてもらったりなんてこともしょっちゅうです」
「それまでは本当に体が硬くて、前屈をしても床と指先の間が10㎝くらい空いてたんです。それがヨガを取り入れるようになったら柔軟性がアップしました」
「脚本はあるけれど、稽古のたびに振り付けも変化していきます。これが正解という形が定まっていない分、本番当日までどうなるかわからない。おもしろいのは串田さんの演出から振り付けが生まれることもあれば、うんさんの振り付けで串田さんの演出が変わることもある。お二人が共鳴しあって、作品が作り上げられている感覚です。僕にとっては今までにない稽古なので、正直本番はどうなるんだろうと不安はあります。でも、その不安よりもとんでもないものが生まれるんじゃないかっていう期待や楽しさの方が断然上回ってる。決まりきったものではなく、その場で何かが生まれ、生きている実感を得られたら最高ですね」
「ごくごく普通の家庭で育って、不自由なく生きてきて……。平穏なことは感謝すべきことだけど、たまに物足りなくなることがあるんです。多感な時期にTHE BLUE HEARTSにハマったせいか、生きるってなんだろうというか、もっとヒリヒリしたい衝動にかられるときが(笑)。そう考えると、役者という仕事は刺激的だし、さらにいえば舞台は僕にとってライフワークになるんじゃないかって予感がある。舞台『メトロポリス』に参加して、その前とその後で役者としてどんな変化が訪れるか今からすごく楽しみ。当日までどうなるかわからないけれど、観てくださる方にも素晴らしい体験になると信じています」
Writing:長嶺葉月
STAGE
2016年11月7日(月)から、東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演
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