「不穏な要素もあると聞いただけで、他に情報は何もないまま台本を読ませてもらいました。最初の印象は、切なくも壮大な家族の愛の物語だということ。それは今でも変わっていません。繭子でいうと、母としての切なさが強く打ち出され、家族の愛の部分も伝わってくる台本でした」
「私にとって今まで出演したことのないジャンルでのお芝居で、大きな挑戦ではありました。かと言って、今までの作品のお芝居と大きく変えてしまうと、茶番になりかねないと思ったので、作品に漂う得体の知れない空気感は大切にしながら、お芝居のトーンを意識しました。何回か変化していく役なのですが、その過程でこの人は一体どうしたんだろうと不自然に思われるようにはしたくないと思いました」
「この作品は夫の司朗が家族愛が思いが強すぎることから迎える結末を描いているので、基本的に夫の司朗を演じる玉木宏さんとのやりとりや芝居の温度感に気をつけました。玉木さんは最後までナチュラルなお芝居を貫かれていて、そのお芝居が絶妙かつ本当に素敵でこの作品の要になっていると思います。玉木さんと私でお芝居について話し合うことはなかったのですが、二人とも同じ温度感だったので、無言の共通認識があったと感じています」
「愛が溢れてしまってだと思うのですが、度を越すと危険や狂気を含んでいくんでしょうね。繭子の家族への思いや母としての一面について、監督は委ねてくださったので、現場で一度やってみた後にいろいろとお話をしながら微調整していく感じでした」
「振り返ってどうですか?という質問には、『現場はとにかく暑かったです』という一言です(笑)。外での撮影はもちろん、家の中での撮影も大変でした。素敵な日本家屋での撮影だったのですが、クーラーがない場所もありまして、むわっとこもった暑さでしたね。外に出ると、サウナから出てきたときのような開放感を感じました。昨年の夏のいい思い出です(笑)」
「次女を演じる子役の女の子がとても可愛くて明るかったので、撮影の合間、『何が好きなの?』とよく聞いていました。玉木さんは、勝手なイメージですがお芝居にとてもストイックで、口数の少ない方なのかなと思っていて。でも、全然そんなことはなくて、“どこどこでお昼を食べたんだけど、おいしかったよ”とか、楽しそうに話しかけていました。いざお芝居になるととても怖かったですが(笑)、フランクで柔らかい方でした。南さんは、この作品でのお芝居はトーンが低めでしたが、彼女自身はほんわかとした空気感も持っているし、柔らかく、可愛らしさも兼ね備えていました。また、それでいて芯の強さを感じさせる素敵な女性でした」
「ネタバレになるので詳しくは言えないですが、ラストは特にぞわっとすると思います。一見平和そうに見えても、どこか不穏な空気が漂っているというか、恐ろしさや狂気が潜んでいる。そんな空気感を感じてもらえたら嬉しいです。全体的にカット割も少なく、奇妙な空気感が途切れずに活かされています。監督が実現したかった世界観を、完成作からより深く感じ、日本ではなかなかないタイプの作品になったと感じています」
「この映画の予告などを見て、怖い映画なのかなって思っている方もたくさんいらっしゃるかもしれませんが、最初にもお伝えした通り、私は壮大な家族の愛の物語だと思います。家族の切なくも深い愛をメインに描きながら、結果的に不穏さを与える作品になったという印象です」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
9月1日(木)新宿バルト9他にて公開
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