「最初から海斗役をやるつもりでオーディションを受けたわけではなくて、まずは大輝も、龍一も、健も、海斗も、いろんな組み合わせで何通りもやってみた上で、監督やプロデューサーが本人の適正を見ながら配役を決めていく形式のオーディションでした。監督から『もうちょっと明るいテンションでやってみて』『こういう感情を持ちながらやってみようか』とディレクションされるがまま、俳優さんたちと一緒にお芝居すること自体が僕にとっては刺激的で楽しい時間でした。『こういう表現の仕方もあるんだ!』って、毎回いろんな発見もあって。お芝居の引き出しも増えましたし、刺激もたくさんもらえました」
「同世代の若手俳優が次々出てくる中で、僕としては『何が何でも絶対このチャンスを掴みたい!』と思っていたので、とても嬉しかったです。でもその一方で、『大輝じゃなくて、海斗なんだ』という気持ちもありました。もともと台本に書かれた海斗のイメージは、いまよりクール系のキャラだったんですが、監督が『空人くんを海斗にキャスティングしてからガラッと変えた』とおっしゃってくださいました。自分なりに『デメキン』や『クローズ』のようなヤンキー系の映画やドラマもたくさん観て研究した上で、『こういう感じの海斗でいきたいと思ってるんですけど……』と提案もさせてもらって。『それいいじゃん! 絶対取り入れよう!』みたいな感じで監督と相談しながら一緒に作り上げていくことができました」
「当初の設定では、海斗が車を運転するはずだったので、そのつもりで準備をしていました。ちょうど運転免許を取ったばかりのタイミングで、本試験は一発合格だったものの、そこにたどり着くまで仮免含めて8回も落ちちゃって、1年半かけてやっと取れたんです(笑)。『ハイエースも運転したことがあります!』『でもまだ初心者マークを貼って練習しています!』と監督に話したら、いつのまにか僕じゃなくて、龍一役の兵頭くんが運転することになっていました(苦笑)」
「大輝役の豊田くんが、『一応自分が主演って感じにはなっているけど、俺は4人全員でこの作品をつくりあげたい。だからみんなも俺のことを支えて欲しいし、俺もみんなのことを支えたいと思ってる』って言ってくれました。その言葉を聞いて僕らも同じ気持ちになれたし、『本気でこの作品に取り組もう!』と思えました。撮影期間は長くはなかったんですが、千葉とか、静岡とか、いろんなところを移動しながら合宿のような状態で撮っていたので、お互いの距離もどんどん縮まって、みんなとものすごく仲良くなりました。役についてここまで深く考えたのも初めてだったので、準備期間も含めてすごく充実した日々でした」
「兵頭くんは戦隊モノにも出演していたのでアクション経験があったんですが、それ以外の3人は初めて。アッパーとかフックとか、蹴りとか。本当に短時間でちゃんと習得できるのか不安でしたが、ダンスの振りを覚える感覚に近い部分もあって、『ゲンジブ』で培った振りの覚えの速さが思わぬところで活かせました。劇中、僕らと因縁のあるグループの一員である、堀口役の菅原健さんとのハードなバトルシーンがあるんですが、菅原さんとは2度目の共演だったこともあり、『こういうときはこうした方がいいよ』って、実際に動きながら何度も僕の練習につきあってくださって。ベテランの菅原さんとのペアで本当に助かりました」
「あまり詳しくは話せないのですが、劇中パンツ1枚になる屈辱的なシーンがあるんです(笑)。『俺ら3人なら最強!』だと思っていた海斗と大輝と龍一が、初めて味わう敗北感。目の前に突如現れたデカい壁をどう乗り越えるか……!?というときに、『やっぱりお前らが必要よね』っていう。傍から見たらバカげたことをやってるようにしか見えないと思うけど、男同士の友情が改めて深まるシーンが僕はすごく好きなんです。12月に湖で撮影したのでめちゃめちゃ寒くて大変だったんですが、大輝役の豊田くんと龍一役の兵頭くんと、3人一緒にパンツ1枚になってお芝居したことは、大倉空人としても忘れられない思い出になりました。あとは、海斗が他の誰よりも大切に想う“ミヨコ”との感動の再会シーンにも、ぜひご注目いただきたいです」
「アッパー系の薬物を摂取したときの演技プランを必死で研究して撮影に臨んだんですが、いざ現場に入ったら、『海斗がやるのはダウナー系の薬物だよ』って言われて、『え!? そんな種類の薬物もあったんだ!』ってめちゃくちゃ焦りました(笑)。ロードムービーだけに車の中で撮影する時間も長かったんですが、基本的に上半身だけでお芝居をすることになるので、表情が大事になるんです。車の中の撮影が終わるたび、すごく達成感がありました」
「僕にとっては“ロードムービー”というジャンル自体が新鮮でした。一瞬一瞬を切り取って大胆につなぎ合わせた世界の中にキャラクターの感情がパズルのピースのように埋まっていく感じがして、すごく楽しめました。でも自分の演技を客観的に見ると、表情にしても、動きにしても、正直まだまだだなぁとは思いました。なかなか自分で思っていたようには映っていなくて悔しい部分もありましたし、『キャラクターの心情を上手く伝える表現方法がもっと他にもあったんじゃないか?』って。その一方で、撮影前の準備期間にどんな準備をしたらいいのか、自分に合った方法論が今回掴めた気がします。台本を読んで分からない部分があったとしても、まずは自分なりに資料を読んで調べてみることが大切なんだと感じました。たとえそれが勘違いだったとしても、決して無駄にはならないし、様々な役をやる上で知識を幅広くしていきたいです」
「僕としては『レッドブリッジ ビギニング』から入った方が絶対分かりやすいと思うけど、まずは『レッドブリッジ』を最初に観て、ところどころ謎に感じた部分を『レッドブリッジ ビギニング』で回収して。スッキリした上で、もう一回『レッドブリッジ』を観る! という流れがやっぱりオススメです(笑)。4人の全ての事情が分かった上でもう一回観てみると、『レッドブリッジ』に対してもまたちょっと違った感情になれると思います」
「念のため誤解のないようにお伝えしておくと、僕自身は海斗とは真逆の人間ですから(笑)。海斗は、正直あの4人のなかでも一番失礼なヤツというか、かなりの異端児キャラクターです。いつも『ゲンジブ』のメンバーと一緒にいるときは、『いいから落ち着け!』って周りを止めている側である僕が、映画の中では逆に周りに止められる立場になるっていう、その違いを楽しんでいただければと(笑)。『ゲンジブ』のステージに立っている大倉空人とは全く違う、“俳優・大倉空人”としての新たな顔を、ぜひスクリーンで見ていただけたら嬉しいです」
Writing:渡邊玲子
MOVIE
6月4日(土)2作同時公開
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