「ワークショップの1、2回は相手の人とフリーで会話をしました。そして、その会話を台本にして、繰り返しました。自然に話すことがなかなか難しく、決められたことを言う感じになってしまったんです。それをどう自然にしていくかがテーマで、演技の基礎中の基礎を学ばせていただきました。後半は、橋の上でのシーンなど、映画の台本で重要なシーンをやらせていただきましたが、応用が難しかったです。そのまま現場に入ったので心配でしたが、現場では1回1回学ぶことがあり、徐々に慣れていきました。橋のシーンでは、監督が『ワークショップのときと全然違うね。良かったよ』と言ってくださり、ホッとしました」
「今は周平を演じた後だからか、多少共通点は感じますけど、演じる前は感じませんでした。僕は周平と違って勉強は好きじゃないですし、性格も明るい方なので、周平のことが想像できなかったんです。現場で体当たりでやるしかなかったですね。でも、現場ではみなさんから周平と呼ばれ、本名で呼ばれるのは自分の家でだけ。撮影中は周平として生きていたと思います。その感覚のおかげで、自然に演じることができたのかもしれません」
「大森監督の現場は撮影がすごく早くて、時間が余って、待ち時間が多いんです。僕は大森監督の現場が初めての映画だったので、映画の撮影ってこんな感じで早いのかなと思ったんですけど、『こんなに早い現場は特別だよ』って言われました(笑)。NGとか、もうワンテイクというのが、ほぼない現場で、大森監督の演出は本当に自由でした。僕のやることを全部受け入れてくださったんです。それがとても嬉しかったし、楽しかったです。クランクアップの日はすごく寂しかったし、またすぐ演技がしたくなりました」
「周平の心に寄り添うと考え込んでしまったり、食事制限もしたり、辛いこともありましたが、それらを上回るぐらい楽しかったです。食事制限はあまり無理をしないよう、撮影の2ヶ月ぐらい前からゆっくりやっていきました。おやつにカロリーの少ない海苔を食べていたら、海苔好きになりました(笑)」
「長澤さんは“テレビの中の人”というイメージで、どんな方かわからなかったんですけど、とても陽気な方でした。阿部さんは、僕が「マルモのおきて」というドラマで初めて知った俳優さんで、共演させていただくことができて嬉しかったです。やっと会えると思って現場に行ったら、何を考えているかわからない方でした(笑)。阿部さんは、僕だけが映るシーンで僕を笑わせようとして、『もう何やってるんですか~』って言い合ったりして楽しかったですね。妹役の浅田芭路ちゃんは、映画の中では暗い感じでしたけど、カメラが回っていないときは本当に元気な女の子で、僕のことをお兄ちゃんとしてちゃんと慕ってくれて、休憩中、スマホでゲームをやりました。僕は撮影で精神的に疲れてたんですけど、芭路ちゃんが『遊んで』って言ってきて、やっぱりかわいいから、かまっちゃうんですよね。役的にも妹を守る役でしたし、かわいいから癒されました」
「普通の関係じゃないと思います。恋人みたいですよね。周平にとってはお母さんなんだけど、秋子は恋人だという感覚があったのではないでしょうか。周平にとっては、自分が成長してからは特に妹と一緒にお母さんも守る対象でした。守ることに、すごく一生懸命だったと思います。僕にも妹がいますが、今まで母を含めて家族に対して深く考えたことがありませんでした。撮影が終わって改めて考えたときに、家族には影響されるものだと感じましたね。空手などの習い事や好きな教科や好きなこと、やっていることなど、過去の自分も今の自分も、親から影響を受けていると思いました。空手やクラシックなど、母にすすめられて習ったり好きになったものもあるので。演技以外でも、こういうことを考えられて、学びになりました」
「街中で家族で地面に座っているシーンです。普通には、なかなか見ない光景だと思います。ボロボロベトベトの格好なのに、誰もこの家族を見ていないんですよね。このシーンは、周平たちが世界との距離は近いけれど、隔離されたというか、弾き出されたという感覚を描いていて、とても深いシーンだと思いました。何気ないけど、深い意味があるシーンが多い作品で、本当に素晴らしいと思います」
「この作品では、自分とは全然違う人間を演じる楽しさを知りました。周平を演じたあとは内向的な自分が出てきましたが、身内からすると、僕は元々は周平とは真反対のキャラなんです。でも、映画を観て僕を知ってくださる方は、周平のような大人っぽい子なんだって思うかもしれない。それをいい意味で崩していきたいです」
Writing:杉嶋未来
MOVIE
7月3日(金)公開
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