「初めて台本を読んだときに自分自身と一番近く感じて感情移入ができたのは、この映画で演じた菜穂子だったのですが、読み返したり何度かワークショップを繰り返したりするうちに、『できることなら自分が全部やりたい!』と思ってしまいました(笑)。それくらい、それぞれのキャラクターにいいところがあって全員にスポットライトが当たる作品です。一見、うまくいっていそうな人たちにも、実はそれぞれに悩みがあって……。きっと私以外のみんなも自分が演じた役だけではなくて、映画の登場人物の全員に思い入れがあるからこそ、より深みのある作品になったんじゃないのかなって、自分では感じています」
「昨年、オーディションを受けても最終審査ではじかれてしまうことが続いたりもしていて、きっと私には何かが足りないんだろうけど、その足りないものは何なんだろう? と知りたくて。自分のなかにある見えない壁のようなものを乗り越えるためにも、このオーディションが良いきっかけになるような気がして受けました。ワークショップを受けている時、私のなかには『絶対に勝ち残ってやろう!』といったライバル心のようなものよりも、勉強しようとか、楽しんでやってみたらどうなるのか試してみようとか、そういう気持ちで受けていました。最初の頃は、第2期の作品台本をもとにお芝居をしていたのですが、途中から今回の作品の台本をいただき、それを読んで、『絶対にやりたい!』という気持ちが強まりました」
「思い返せば、いままではもっと独りよがりだったような気がするし、『審査員の方々にどう見られてるんだろう?』というような、要らない恐怖心を抱いていた気がしています。でも今回は、オーディション期間が長期に渡ったこともあって、映画の舞台となる伊東市のことや、一緒にお芝居をするチームのみんなのこと。さらには、『この台本に描かれているテーマを魅力的に表現するために、自分には何ができるのだろう?』と、自分自身じゃなくて、作品そのものに情熱のベクトルが働いたんです。いまでもオーディションによっては、これまでのクセが出てしまって、『あ~、ダメだったなぁ』と反省することもたくさんあるんですが、そういうモードにちゃんとできたときは、うまくいくような気がします」
「菜穂子はお父さんが地元議員ということもあって、地域での自分やクラスでの自分といった立ち位置にどこか縛られていて、いつ誰に見られてもいいように常に口角が上がってなきゃいけないと、鎧で守りすぎているところがあります。だからこそ複雑な人間関係に自分から深く介入しないという、どこかドライな部分もあるのかなぁって。そこはちょっと自分とも似ている感じがしました」
「ありがたいことに『声がいいね』と言っていただけることがあり、自分でもずっと声のお仕事がしてみたいと思っていたこともあって、その想いをラジオのパーソナリティという形で今回表現できたのはすごくうれしかったです。『ラジオ番組を聴いたりして、もっと勉強したほうがいいですか?』と監督に質問したら、『いや、むしろちょっと慣れてない感じが残っている方がいい』とおっしゃっていたので、自分の思うままやらせていただきました。私は埼玉県の平野で育ったので、海も山も両方ある静岡県伊東市は、とても新鮮でした。食べ物も本当においしいですし、商店街など地元に密着した魅力あふれる場所だなぁと感じました。伊東市に一週間ほど泊まり込んで撮影をしたのですが、修学旅行みたいな感じだったんです。普段の私はそんなにみんなを引っ張っていくようなキャラではないのですが、『菜穂子役をやるからには私もしっかりしよう!』と思って、柄にもなくみんなに『行くよー!』って声をかけたり、率先して部屋の片付けをしてみたり(笑)。オーディションからずっと苦楽を共にしてきましたが、やっとみんなの緊張もほぐれてきて、それぞれの個性がバンバン出てきて驚きましたが、そんなところも含めてすごく楽しかったです」
「伊東市のことは自分でもインターネットでいろいろ調べましたが、やっぱり小室山からの景色は圧巻でした。360度見渡す限り遮るものが何もなくて、海の漣や風の音、電車が通る音も聞こえてくるんです。いろんな音や景色に包まれるので、ウワーッと感情がこみあげました。日本一短い横断歩道にも驚きましたし、PR活動中に食べたいくら丼や鉄火丼もすごくおいしかったです。伊東市は冬でも花火大会が開催されていて、撮影初日にみんなで花火を見に行ったんです。教室の窓の外にも一面の海が広がっていて、ずっと眺めていました。海を見ていると時間を忘れるし、心が浄化されて、とても穏やかな気持ちになりました」
「これまでオーディションで共に戦ってきたみんなの顔が、ストーリーが進むにつれてちょっとずつ晴れやかになっていくのがとても印象的でした。誰かの勇気を出して起こしたある行動が、また別の誰かの背中を押すきっかけになったりもする。そんなすてきなバトンのような連鎖を目にして、『あぁ、こうやって人はお互いに影響しあって少しずつ変わっていくんだなぁ』と、私自身も心を打たれました。映画のなかで朱莉役を演じている片田陽依さんが、なんと音楽も担当されていて、12曲中7曲ぐらい作曲しているんです。実は、私もピアノやギターを弾いているんですが、作曲はまだやったことがないのですごく刺激になりましたし、自分でもいつか挑戦してみようかなと背中を押されました」
「今回はプロジェクトの名の通り、若手発掘育成を兼ねていることもあって、『私の卒業』プロジェクトのスタッフの方々に、とても手厚くサポートをしていただきました。今後すべての現場で必ずしもここまで丁寧にサポートしてもらえるわけではないと思うので、自分の意志をしっかり持って、いままで以上にもっと高い壁を乗り越えるのが、今後の自分の課題です。でも今回の現場のことを思い出せば頑張れるような気がするし、この映画のように『これから先どうなるか分からなくて不安でも、いまを楽しもう!』と自分に言い聞かせれば、きっとすこしずつ変われるんじゃないかなと思います」
「数年前に埼玉から東京に引っ越したのですが、小中ずっと一緒だった幼馴染みと成人式で久しぶりに再会できて、すごく懐かしかったです。私が芸能活動を始めたことも喜んでくれていて。これからいろんな経験ができるようになるかなという意味では楽しみでもありますが、10代の特権もきっと沢山あったと思うので、ちょっと寂しい気もします。映画の撮影中に一つ年下の共演者の方から『中3ですか?』と聞かれたくらい私は幼く見えるらしいので(笑)、『まだまだ制服姿もいけるんじゃないかな?』と自分では思っています(笑)」
「今は等身大の女の子が抱く葛藤を演じることが多いですが、『のだめカンタービレ』ののだめのような、自分自身からかけ離れたキャラクターも演じてみたいです。NHKの「朝ドラ」も自分のなかでの大きな目標のひとつで、ジブリ作品や、新海誠監督、細田守監督のアニメの声優のお仕事も、いつか挑戦してみたい。深津絵里さんや宮沢りえさんのような女優さんに憧れています」
Writing/渡邊玲子
MOVIE
3月18日(金)より新宿バルト9にて期間限定公開
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