「オーディション用にいただいた成瀬のセリフを読み込んでいた時に『成瀬ってこういう子だろうな』って、メガネをかけておどおどしている女の子が頭に浮かんできました。私なりの成瀬になるためにオーディションにもメガネをかけていったんです。衣裳合わせでも『それ、成瀬っぽいね』って、そのままメガネキャラが採用に(笑)。『杏花ちゃんだったらどれを選ぶ?』って、私の意見も聞いてくださって、皆で相談しながら一緒に作っていく感じが味わえたのも楽しかったです。ちなみに劇中で成瀬が肌身離さず持っていたアイデアノートは、クランクイン前に一度お預かりして全部自分自身で書き込みました。台本を読んだ時には、成瀬は本来の私とはかけ離れたタイプだと思っていたんですが、久保監督から見るとどこか重なる部分もあったみたいで、『結構似ている部分もあるよね』と言っていただきました(笑)」
「『成瀬は好奇心旺盛で、憧れの先輩たちを前に緊張してアガってしまっているんではないか』とか『このシチュエーションでは、きっと成瀬はこんな気持ちになっているんじゃないかな』って、久保監督ともその都度相談しながら成瀬のキャラクターを動作や口調で表現していきました。『成瀬だったら、ここではもう少し細やかな動きをするんじゃないかな』って、自然と身体が動いたんですよね(笑)」
「私自身はすごく人見知りなんですが、皆さんそれぞれがムードメーカーな方たちばかりで、すんなり輪の中に入っていくことが出来ました。中でも橋本環奈さんはどんな人に対してもものすごくフレンドリーで、年下の私にも率先して声をかけてくださって、とてもありがたかったです。佐藤大樹さんも、佐藤流司さんもすごく気さくな方たちで。偶然お二人とも“佐藤さん”だったこともあり、下のお名前で呼ばせていただいていました(笑)。私は流司さんとお芝居するシーンが多かったのですが、流司さんからは沢山アドリブが飛んでくるので、その場その場で臨機応変に掛け合いを楽しんでいた感じもあります。現場の空気感やお芝居のテンポも先輩方が全部作ってくださったので、私はその流れにただただ乗っからせていただきました」
「いままで映画館でモノクロ映画を観たことがなかったので、始まった瞬間からすごく新鮮で、独特の世界観にすっかり引き込まれてしまいました。第一章、第二章、第三章……と、章ごとに主人公が入れ変わる設定も、台本を読んだ時から『すごく素敵だなぁ』『あまり他にない作りの映画だなぁ』と感じていたんですが、完成を観て『うわぁ、さすがだなぁ』って感動しました。成瀬のプロモーションビデオ風のカットは第三章の冒頭に流れるんですが、撮影するときはグリーンバックだったので実は完成がイメージしにくい部分もあったんです。でも監督が絵コンテを片手に『はい、じゃあ今から怒った表情して!』みたいに、私のすぐ隣で指示を出してくださって。CGと音楽が入った状態で観たら、まさに絵コンテのイメージ通りに仕上がっていたのには本当に驚きました」
「文芸部の部室のセットにもすごく遊び心があって、よく見ると壁の本棚がグランドピアノの形になっていたりもするんです。撮影の合間もずっと部室の中で小道具を触ったり、実際に何10冊も積んである本を読んだりしながら、飽きることなく楽しんで過ごすことができました」
「よりリアルな小説を書くために、文芸部の皆でテニス部に体験入部するシーンがあるんですが、真夏に赤い長袖ジャージを着て撮影していたので、とにかく暑かったんです。皆さん真っ黒に日焼けしながら、テニスの練習を頑張りました。私はつい最近まで高校生だったんですが、『うわぁ、学校生活ってこんな感じだったよなぁ』って懐かしくなりました(笑)」
「一見デコボコな二人が、時に葛藤したり奮闘したりしながらも、一緒に小説を作り上げていく……というお話なんですが、その過程で二人の間に“小説を超えた何か”が生まれるところが、ものすごく感動的だなって感じました。お互いにぶつかり合って乗り越えていける二人の関係にも憧れますし、きっと観ている方々も『青春ってこういうものだよなぁ』って、共感して感動していただけるんじゃないかと思っています。この作品は主人公の二人だけではなく、4人の視点から描かれているので、一度観終わったあとに、今度は別のキャラクターの視点で観る面白さもあると思うんです。観るたびに新しい発見があると思うので、きっと何回観ても楽しめるんじゃないかな。『小説には人の心を動かす力がある』というのが本作のテーマなんですが、私自身は、お芝居や歌や踊りで表現することで、自分自身を解放している部分があるんです。私が表現しながら感じている楽しさが、それを観てくださる人たちにも伝わって、いつか誰かの心を動かせる日が来たらいいなって思っています」
Writing:渡邊玲子
MOVIE
10月2日(金)公開
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