「僕自身、『ラジエーションハウス』にはドラマならではの良さがあると思っていたので、そこからさらにクオリティを上げて、“映画”としてどう成立させるんだろう……? という不安要素も正直ありました。でもシーズン1を多くのファンの皆さんに観ていただいたおかげで、シーズン2が製作出来ることになって。さらに『劇場版も作りたい!』っていうところまで行けたんだと思ったら、不安よりむしろ感謝の気持ちが湧いてきました。『ラジエーションハウス』を映画化できる流れになったこと自体がすごいことなんだって、素直に思えるようになりました」
「子どもの頃に観た『もののけ姫』がいまでも忘れられないのは、『映画館で観たから』というのも絶対に関係があるはずだと僕は思っていて。『あの映画は映画館で観た!』という体験が、きっとそのまま記憶に繋がるんだと思うんですよね。配信でも観られるこの時代に、みずから映画館に足を運んでお金を払って映画を観るということ自体、実はものすごく価値があること。いまの子どもたちにも映画を届けられるようにしたいという思いもある。コロナ禍でさらに厳しい状況に追い込まれている全国各地の映画館で、『劇場版ラジエーションハウス』を流したいんだ! という製作側の強い意志も感じますし、もともと漫画から生まれたドラマである『ラジエーションハウス』が、映画館の大スクリーンで流れる作品まで成長したんだと考えると、役者冥利に尽きます。シーズン1からみんなで作り上げてきたものが、ちょっと報われたような気がしました。やっぱり、テレビで観るのと映画館で知らない人と同じ時間を共有しながら観るのとでは、残り方も違ってくると思うので」
「僕は三兄弟の末っ子なんですが、窪田家は三兄弟の持ち物がすべて色分けされていました。長男が赤で、次男が黄色で、三男の僕に振り分けられた色が青だったので、子どもの頃から『青は自分のもの』みたいな意識がずっとありました。『ラジハ』の青はスクラブの色だけじゃなくて、レントゲン写真の色でもあると思うんです。ドラマや映画のエンドロールで使用されるメイキング写真まですべて青一色だったのには、さすがにビックリしましたけど(笑)」
「シーズン1からの2年の間に朝ドラ以外にもいろんな作品を挟んでいたので、さすがにそれだけでは無理でした(笑)。シーズン2の撮影に入る前にシーズン1の第1話からもう一回全部見直して、いろいろと思い返しながら新しい台本を読み込みました。でもいざ衣裳合わせで鈴木(雅之)監督とお会いしたら事前に準備していたものが一気に吹き飛んで(笑)。演じていくうちに自然と『ラジハ』の世界に入って行けた感じでした」
「鈴木監督が最初の衣裳合わせのときに話していたのが、『チームワークを何よりも大事にしたい』ということでした。誰か一人にフォーカスして追っていく構成ではなく、『ラジハ』の場合、誰かが別の誰かに対して何かを言ったり何かをしたりしたときの、受け手側のリアクションがものすごく重要になってくる。だからこそ『同じ画角にメンバー全員を収めたい』という意図が、監督のなかにもあるんだと思うんですよね。普通に考えたら一人の患者さんに技師が10人も付くなんてことはありえないけど、『本当にこんな病院があったらいいな』と思わせてくれるのが、『ラジハ』のいいところなんです」
「現実世界の病院では常にいろんなことが同時進行で起きるわけですけど、映画でもそれを表現できるのは、ドラマ版からずっと続くチームワークがあってこそ。劇場版から参加してくださったキャストやスタッフの方々に後押ししてもらった部分も、大いにあると思います。医療現場を舞台にした作品を作る以上、現実世界で起きている問題を置き去りにするわけにはいかないので、シーズン2はマスクをしている設定にしようかという話もありました。だからこそ劇場版では感染症を題材にしていたり、人と人とのつながりを表現するために、病院から飛び出して小さな島を舞台にしたようなところもあったりしたんじゃないかな。映画の冒頭には車の事故のシーンが描かれるのですが、リアルさを追求したくて、鈴木監督が撮影に相当時間をかけたと聞いています。人災や天災はいつどこで誰に降りかかるかわからない。そんな鈴木監督の想いが、冒頭の車のシーンから特に強く伝わってきた印象を受けました」
「僕が演じた役柄は絶対的エースのように見られがちなポジションではあるんですけど、真ん中に立とうとする人ではなくて、むしろあのチームの端っこにいるような人。その感覚は最初からずっとブレずに持っていた気がしますけど、唯織の技師の仕事の根本にあるのは、あくまでも本田(翼)が演じる杏ちゃんへの想いなんですよね。劇場版はこれまでの集大成ということもあって、唯織が今までで一番ハッキリと自分の気持ちを杏ちゃんに伝えるというか、ずっと心の中で押し殺していた感情を吐き出すシーンがあります。でも『ラジハ』において変わっていくのは唯織じゃなくて、あくまでも患者さんと杏ちゃんとチームのメンバーなんですよ。劇場版では(広瀬)アリス演じる広瀬(裕乃)とハマケン(浜野謙太)さん扮する軒下(吾郎)の成長ぶりに、ぜひとも注目してみて欲しいです」
「難しいなぁ~。世界一か……。きっとこれは別に俳優に限った話とかではなくて、どんな職業でも言えることになってしまうんですが、結局のところ『人生は楽しんだもん勝ち』だと僕は思うんですよね。『いつどんなときも自分はこの瞬間を楽しんでいる』って思いながら、生きていたいなとは思います。世界一かどうかは、ちょっと分からないですけど(笑)」
「この前、衰弱しきった猫が道端で動けなくなっているところに、たまたま遭遇したんです。このままだと車に轢かれて死んでしまう……と思ったら見捨てるわけにいかなくて。動物病院に連れて行って、なんとか延命措置をしてもらったんですけど、結局一週間後に死んでしまいました。同じ命あるものとして今こうして自分が生きていられるのは、すごく貴重なことなんだって、改めてその猫に教えてもらったような気がするんです。生きることは楽しいことばかりじゃなくて、むしろ苦行に近い部分もあったりする。僕は死んだからってそこですべてが終わるわけではないと思っているけど、死ぬときに初めてその人の真価が問われるんだとしたら、生きている間に何をどれだけ成し得たのかが一番重要になってくるわけで。時間はお金じゃ買えないし、限りある時間を何にどう使うかは、結局その人次第になってくる。だからこそ僕は、いいことも悪いことも全部ひっくるめて、『人生は楽しんだもん勝ちだ』って思いながら生きているようなところがあるんですよね」
Writing:渡邊玲子/Photo:笹森健一
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