「はい。最初にショートムービーのシリーズのオファーをいただいて、制作を始めた楽曲です。全体の映像を担当するプロデューサーの方からは、主人公に寄り添いつつ、ぼくの経験も入れてほしい、というお話がありました。」
「“いちばん苦しかったときの自分探し”というのが、いちばん最初にもらったキーワード。日本に初めて来た時は色々もがいていた時期でもあったので、その時の自分が感じたようなことリアルに描きたいと思いました。」
「プロデューサーからはまず最初にメロディを作ってほしいと。それでまずは曲を書き下ろして、すごく細かく指示をいただきながら調整していきました。最初は台本しかなかったストーリーが、1話、2話と映像ができあがっていくので、それを見て直すこともありましたね。より具体的になっていって。メロディだけで3ヶ月ぐらいかかって、歌詞を詰めて、レコーディングまでに1ヶ月。全体的な制作期間は4ヶ月ぐらい。その間はこの楽曲しか作っていないんです。1曲だけを作り続けるっていうことはあまりないので、すごく珍しいです。」
「ちょうど47都道府県を回る全国ツアー中だったんですけど、その途中で全国にあるスタジオをお借りしてメロディを書いたり、ホテルの部屋で作業したりしていました。締め切りの関係もあったんですけど、いろんな地方のスタジオに行けて面白かったです。基本は自宅で作る事が多いので、初めての体験でした。」
「そうですね。自分の体験と照らしつつ、他の人にも伝わるようなものにしようと。ただ「頑張れ」っていうのは違う気がしたんです。ぼくはそういうキャラじゃないし、自分が経験したものを踏まえて歌詞にしたいなと。ですから、ぼくのことを知ってる人がこの歌詞を読んで「ああ、確かにこうだったな」ってわかるようなものにしようと思いました。例えば困った時に「神様助けてください!」っていろんな人が思うと思うんですけど、僕はクリスチャンなので、そういう神様への祈りみたいなものはより強いと思うんです。特に日本に出てきて何もできなかった時は、すごく考えていた時期でした。言葉が通じなくて、この先成功するかどうか不安で、日本に来ていることすら正しいのかどうかわからない。そういう時、とにかく神様になんとかしてほしいっていう気持ちがあったんです。」
「曲のトーンは少し暗めかもしれないです。東京に出て来た時、すごく寂しく感じてたんですよ。人も多いし、鮮やかだし、スピードも早いし、とても賑やかな場所なのに、すごく寂しい。みんな夢を持って東京に出てくるわけじゃないですか。だけど寂しくてどうしたらいいかわからない。振り返ってみれば、あの頃に感じた東京って、乾いている印象がすごくあったんです。なので、音数は少なめにして、ひとつひとつをしっかり聴かせるようにしました。リバーヴはあえて切って、ほぼゼロに近いです。とにかく乾いた印象にしました。」
「反対に歌そのものは明るくしたくて、ちょっとブースの外から見たら「なんだろう?」って変に思われるかもしれないですけど、笑いながら録ってたんですよ。笑顔で。」
「そうやってちょっと笑顔になって歌うと、歌自体が優しく、明るいものになるんですよ。この曲で描きたかったのは、とにかく暗そうに見える東京の中で、それぞれが目標を立ててそこに向かって歩いている。先はわからないけど、続けてやっていくことが希望だったり、夢だったりする。そういう風景を表現しようと思ったんです。だから曲は少しトーンを落としていても、歌自体は明るく歌うっていうのはすごく気をつけた部分です。」
「カバーって、リスペクトも込めながら、自分ならではの曲にしないといけないというのもあるので、すごく難しい部分があると思っていて。でもこの『心の瞳』はすごく好きな楽曲で、ライブでもカバーさせてもらっていたんです。あとで知ったんですけど、九さんが亡くなられる直前に録音した曲で、ご家族もとても大切にされている曲だそうなんです。」
「楽曲の力です。今聴いても全く色褪せない曲なんですよね。」
「去年レコーディングをしたんですけど、録ったあとに色々と都合が重なって、もう一度録音し直すことになって。ちょうどその間に子どもが生まれて、色々と感じる部分が多い時期でした。そうした変化の前で、自分の歌がどう変わるのか、ということにも純粋に興味がありました。」
「うん、やっぱり色々と変わったなあと思いました。表現者ってそうあるべきだと思うんです。見るもの、聴こえてくるもの、テレビを見ても、ラジオを聴いていても、気になるポイントがどんどん変わってくる。それは自然なことだと思うんです。そして、それが反映されてくるのが歌の面白いところというか。」
「それが、最近ラブソングがすごく増えてるんですよ。漠然と「もっと子どもに向けた歌を作るようになるのかな?」と思ってたら、浮かぶのは色々なタイプのラブソング。“ラブ”に対しての向き合い方が変わったのかもしれません。なんていうか、今自分が感じたことや思っていることを、なんでもいいから残していきたいという思いがすごくあります。やっぱりこの感覚は今しか感じることができないし、ラブソングでも悲しい曲でも、形に留めておきたいというのがあるかもしれないです。」
「それはもういい感じにやりますよ(笑)。」
「どんな感じ? って聞かれたら、それはいい感じって言わないと(笑)。」
「そうですね、毎回変えてるんですけど、リクエストを受けてその曲だけにお答えするという。あと今回は「歌わない」っていうのもちょっとやってみたくて。」
「トークだけでお客さんを楽しませることができるのかな……? っていうのをちょっとスタッフと考えてるんです。」
「トークだけっていうのは初めてかもしれないです。でもそうやって色々やれるのもファンクラブだからこそ。みなさんが許してくれる範囲でやってみたいなあと思っています。」
Writing:飯田ネオ
SINGLE
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