「オーディションを受けた時は具体的な配役まで決まっていたわけではないですし、まさか最終選考まで残るとは思っていなかったので、出演が決まった時は『大丈夫かなぁ……』って、不安な気持ちでいっぱいでした」
「血洗島のオープンセットがとにかく広くて、緑豊かなテーマパークみたいな感じなんですよ。初めて行った日は観光ツアーのように、広大なセットの中を案内していただきました。見渡す限り本当に遥か先まで畑が続いているんです。撮影をするときは限られたエリアで行うので、特に圧倒されたりすることもなく、普段通りお芝居をすることが出来ました」
「伝蔵は栄一さんの後ろ姿を見て育ったはずなので、栄一さんの一挙一動から目を離さず、できれば芝居にも取り込んでいきたいなと思いながら、ずっと遠くから観察していました。そうしたらある日、普段の自分とは違うポーズで立っていることに気付いて、『うわ、これ栄一さんの立ち姿と同じじゃん!』ってすごく驚いて。でもそれ、よくよく考えてみたらドラマの中の栄一さんじゃなくて、休憩中の吉沢亮さんの立ち姿だったんですよ。栄一さんを取り込むつもりが、あまりにも観察しすぎて吉沢さんのリアルな癖まで取り込んじゃったみたいです(笑)」
「伝蔵は外からやってきた男なので、思った以上に孤独なんですよね。立場も年齢も全然違うから、最初はなかなか兄貴に近寄れなくて、初めて道場に入るシーンは本当に緊張しましたし、だからこそ『来いよ!』って栄一さんに声をかけてもらった時は本当に嬉しかった。台本を読んだだけではわからなかった感情が、その場に行ったらリアルに体感できたんです。事前に剣術の稽古も受けたんですが、現場に入ってからは一度も剣を振っていなかったので、本番直前に隅の方で素振りをしたりして、稽古のときの感覚を必死で思い出しました」
「休憩中、高良さんが『普段どんな音楽聴いてるの?』って声をかけてくださって、「『GEZAN』っていうバンドが好きなんですよね』ってお伝えしたら、そこからさらにいろんな方向に話題が広がったんです。ありがたいことに高良さんは僕のことを“護”って下の名前で呼んでくださるんですけど、他の共演者の方たちからは役名の“伝蔵”って呼ばれることが多いので、“護”って呼ばれると、実はちょっとドキッとしちゃうんですよ。『あれ、いま俺は伝蔵のはずでは……!?』って(笑)」
「僕は小学生の頃からダンスをやっていたので、大会の前にメンバー同士で「よっしゃ~! 行くぞ~!!」って大声を出して、チームの士気を高める習慣が割と昔からありました。だから撮影でもいざ『よーい、スタート!』って声がかかってカメラが回ってしまえば、すぐに役に集中できるんですよね。“伝蔵”としては緊張しないけど、“萩原護”として現場にいるときは緊張しているような感じなのかもしれません(笑)」
「現場に通ううちに、緊張のあまりボディブローがじわじわ効いてきてるような感覚があります。同世代がほとんどいない環境にあまり慣れていないこともあって、『休憩時間どうしようかな……』とか考えると、緊張しちゃうんですよね(苦笑)。まもなく別のシーンの撮影が再開されるので、プレッシャーを感じる日々がまた始まります」
「中学に入学してから行動範囲が広がって映画館にも初めて一人で行くようになったんです。初めて一人で観に行った映画で『うわ、映画ってこんなに面白いものなんだ!』っていう出会いがあり、ものすごく衝撃を受けました。それまでは抑揚があるエンターテイメント系の映画やアニメしか観たことがなかったので、『こんなにも淡々とした日常や家族の姿を描いた映画があるんだ!』って驚いて。でもその時『自分も事務所に所属しているわけだから、いつかこういう作品に関われる可能性もあるんじゃないか』って気づいて、そこからだんだんとお芝居に興味を持ち始めました」
「大体どれぐらいの本数を観ているのか目安を知るために去年はメモをしてたんですけど、別に本数にこだわっているわけではないので、普段はあえて数えたりしていないんです。海外だとグザヴィエ・ドラン監督の映画が好きで、新作が出るたび必ずチェックしています。ドラン監督には会ってみたいし、いつか一緒にお仕事してみたいなって思うんですが、日本の監督の場合は一緒にお仕事したいというより、『絶対に新作を見続けたい』という感覚なんですよね。『WE ARE LITTLE ZOMBIES』の長久允監督もその一人で、去年は舞台も観に行きました。あとは、大森立嗣監督の『MOTHER マザー』に出ていた奥平大兼くんとは同い年ということもあって、すごく刺激を受けましたね。セリフがないシーンでも表情や存在感だけで語れる役者さんが自分は好きなので、いつか自分もそんなふうになれたらいいなぁと思います。いろんな映画を観ていくうちに『どんなスタッフさんが作ってるんだろう?』って気になって、エンドクレジットをチェックするようになりました。俳優部の仕事は自分も経験させていただいていることもあって、どんな感じなのかは大体想像がつくんですが、作り手側の仕事は知らないことばかりなので、すごく興味があるんですよね。大河ドラマの撮影現場でもいろんな部署の方たちの仕事ぶりを見ることができて、たくさん吸収させていただいています」
「中学に入ってダンスを辞めたタイミングで映画と出会ったので、もしかしたら無意識のうちに、次に熱中できる何かを探していたのかもしれません。正直いまはまだ役者になれている実感が全くないんですが、地道に続けていく中で見えてくるものもきっとあると思うので、吉沢さんや高良さんの背中を見ながら、いまはもっとお芝居を頑張りたいです」
「大河ドラマは目標の一つだったので、まさかこんなに早く夢が叶うとは思っていなかったですし、出演できることを本当にありがたく感じています。家族に観られるのはまだちょっと恥ずかしいですが、いまの自分に出来る限りのことは精一杯やっているつもりなので、ぜひ多くの方々に観ていただけたら嬉しいです」
Writing:渡邊玲子
TV
[NHK 総合]毎週日曜20:00~
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