「表紙も含めてなんですが、“よくあるモデルのスタイルブック”には絶対にしたくなかったんです。『どっかで見たことあるよね』っていうのが私としては一番避けたい事態で。この2年間、発案から発売まで2年間かけて取り組んできて、1冊の本を本気でエネルギーを込めて作ることの大変さに、ふと『これでいいかな』って弱気になることもあったし、先が見えなくて涙が出ることもあったんです。でも、いわゆる本作りは初挑戦でもある私に裁量を持って任せてくれる贅沢なプロジェクトだったし、『私がやる意味がある』と背中を押しながら前に進んできました」
「普段はモデルとして雑誌に登場させてもらっているけれど、モデルは撮影したら基本的にはそこで終わり。その前にどんな準備がされて、また撮影後にどんな作業が行われているかは具体的に知ることがありませんでした。こうして始まりから終わりまでページづくり、本作りに一貫して携わったことで、編集さんはじめ、スタッフさんたちがゼロから立ち上げて形にしていくことの難しさに触れられました。モデルとして担うのは一部分ではあるけれど、きちんと応えられるようなクオリティの高い仕事をしなきゃ失礼ですよね。そう気付かされることもたくさんありました」
「スタイリストの野口強さんは、以前お世話になったこともあったけど、きっとお忙しいし、ダメ元でお願いしてみたんです。ご協力していただけることになって本当に嬉しくって。スタイリングもかっこいいし、そのページは野口さんの世界観の中にいるモデルemmaを見せられたんじゃないかなって。他にも、ピンク、バッドガール、セクシー……といろんなテーマがある中で、『このテーマならこの人とやりたい!』っていうアイデアはすぐに出てきたんです。頭の中に浮かべたヴィジュアルを伝えて、それが現実になっていく作業はすごく興奮しました。同い年のカメラマンさんと撮影しているときは、あーでもない、こーでもないって意見をぶつけ合ったりもして、純粋に楽しかった。ちなみにバッドガールの撮影は、新宿のゴールデン街。雑多な街の中で撮影したくて、とりあえずゴールデン街に集合しつつ、その場で「ココ、かっこいいかも」とフレキシブルにロケ場所を選んで撮影しました。ある意味で、その瞬間の感性みたいなものも写真に切りとられているはず。この撮影では、大好きなネイリストさんにネイルチップを作ってもらっているので、爪の先まで見逃さないでください(笑)。モデルデビューからまだ5年だけど、この間に培ってこれた関係性とかご縁を改めて感じることも出来ました。もう、感謝しかないですね」
「具体的にっていうよりは、感覚的なものなんですが、旅先で目にしたアートだったり、その国独特の色使いや空気感ってあるじゃないですか。本を作っていると、どうしても部屋の中に閉じこもってしまって、うつうつとしちゃったりで……。そういうときこそ日本を飛び出して違うカルチャーに触れることが気分転換になったし、インプットにもなりました」
「実はパソコンとか全然ダメなんですよね。アイデアを伝えるときも、基本手描きだし手作り(笑)。とあるページでは、スクラップの切り抜きをこういうふうにデザインしたい!とイメージのために、写真を切り貼りしたコラージュを作ったら、それがそのまんま採用されることもありました。ハサミで切って、ノリをつけて貼っての繰り返し。最初は丁寧に切り抜いていたのに、だんだん粗くなっていく過程も垣間見えます。とことんおしゃれなビジュアルにこだわったページもあれば、手作り感満載なページもあって。きれいにまとめようと思えばできるけれど、それも含めてアナログな感じが私らしいなって」
「家族が大好きなんです。だから今回、家族のページは必ず作ろうって決めてました。お気に入りのカットは、家族旅行のロンドンでの一枚。頭の中に、この構図が浮かんでいました。他にも、両親の若いときの写真や、祖父と祖母のウエディングフォトをデザインでちりばめたりして、自分のルーツを強く感じられるような大切なページになっています。ちなみにママの写真は、厳しいママチェックを通過したものだけが掲載されています(笑)。家族に向けてメッセージも載せているから、今から反応が楽しみです」
「質問選びも自分でしちゃったので、もう眼球が痛くて痛くて(笑)。モデルをしているとファンの人と交流できる機会って決して多くはなくて、でもインスタなどで応援してくれる人たちとこのタイミングなら一緒に何か作れるかもってところからスタートしました。応援メッセージが込められたイラストなども募集して、その中で大好きな作品を発表したり。読んでくれる人がワクワクできるような仕掛けも作りたかったんです」
「ファッションって表現だと思うし、トレンドにしばられずに自由であるべきもの。モデルという仕事柄、トレンドを発信する立場ではあるんですが(笑)。もっともっと自分のセンスとか感覚でキャッチしたものを信じてほしいなって思ってるんです。自分が可愛いと思ったら、それを貫いてほしい。みんなが同じである必要なんてないですもん。既存のカワイイとかオシャレはひとまず置いといて、そこから抜け出すのもアリってことを伝えられたら。そうすればガールズカルチャーは、もっと多様化していくし、もっと進化していくはず。『emma』が何かしらの刺激、きっかけになってくれたら嬉しいです」
Writing:長嶺葉月
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